写真整理や日報作成の手間を現場で解決、KANNA導入で年間約700時間の業務時間削減を見込む

重量物輸送の先駆けとして1890年に創業以来、港湾荷役、ロジスティクス、プラント建設など、「動かす」に関連する多様なサービスを提供する株式会社宇徳。港湾事業 、物流事業、プラント事業の3事業を主軸に、日本のインフラを支える役割を担ってきました。
時には1000トンを超えるほどの重量物を輸送し、その据付工事までの一貫輸送を自社で提供する宇徳は、何を課題にKANNAの導入を決め、どのような効果を実感されているのか。KANNAの運用を牽引される福田脩二様、小野寺崇様のお二人にお話を伺いました。
KANNA導入の背景と効果
課題
(1)帳票作成はすべて作業終了後に行う必要があり、残業が常態化していた
(2)写真の整理や添付作業に時間と手間がかかっていた
(3)図面や資料の共有はメールが中心で、更新のたびに再送作業が発生していた。また、紙の図面を現場に持ち運ぶ必要があり、資料管理の負担も大きかった
効果・改善
(1)スマートフォンやタブレットを使って日報の作成・提出・写真添付を現場内で完結できるようになり、残業が削減
(2)資料共有をKANNAに移行したことで、メール作成の手間がなくなり、現場でいつでも端末から最新資料を閲覧可能に。工事の精度向上にもつながった
(3)図面などの資料は案件ごとに格納され、紙資料の持ち運びが不要に。ペーパーレス化が進み、現場の負担軽減にも貢献
お話を伺った方

株式会社宇徳
輸送・施工技術部 技術チーム
アシスタントマネージャー 福田脩二様(右)
総合企画部 経営企画チームリーダー 小野寺 崇様(左)
港湾・物流・プラントの総合力を強みにインフラを支える135年企業
—— はじめに、株式会社宇徳の事業内容をお教えください。
福田様:当社は日本国内の重量物輸送の先駆けとして、今も本社を構える横浜の地に1890(明治23)年に創業いたしました。以来、あらゆるモノを“動かす”ことに関連する多様なサービスを提供しておりますが、事業としては大きく3つ、ターミナルの管理・運営をはじめとする港湾事業、輸出入や倉庫管理といった物流事業、重量物輸送や建設工事などのプラント事業に従事しています。
小野寺様:創業から135年にわたって積み重ねてきた技術力も、保有する特殊機材も、港湾・物流・プラントという3つの事業を主軸としているからこその総合力も私たちの強みです。例えば、海外の港から日本の港へと重量物を輸送し、国内の指定場所へと運搬し、据付まで行う。そうした直営一貫輸送サービスを武器に、国内外のインフラを支える役割を果たしています。
(左)高速道路の高架橋の架設工事 (右)石油化学プラント機器据付工事
—— 今回、どちらの事業にKANNAを導入されたのでしょうか?
福田様:プラント事業にKANNAプロジェクトとKANNAレポートを導入しました。当事業は全国各地の橋梁工事、超重量製品の輸送据付、特殊機材の保守・メンテナンス管理、各種発電所における保守・管理や新規設備の搬入据付工事など多様なフィールドで業務を行っています。
小野寺様:なかでも特徴的なのが、プラント事業は超重量級、非常に重いモノを扱っている点です。橋梁工事の一つである橋桁の重さは何百トン、時には1000トンを超えることもあります。
火力発電所向けガスタービンの搬入作業
日報作成の負担が業務を圧迫し、現場終了後の残業が常態化
—— KANNA導入前の課題について教えてください。
福田様:私たちの務めは現場の皆さんが安全に、遅延なく精度の高い施工ができるよう、全体を管理することです。そのためには日々の進捗を記した日報をはじめ、各協力会社に向けた作業指示書、安全管理のKY活動表などに代表される、さまざまな帳票を作成する必要があります。しかしこれらは現場作業後に行っていたため、職員の残業が常態化していました。この課題を解決すべく「タスクフォースチーム」を結成し、残業時間を試算したところ、1日あたり約2時間発生していることがわかり、早急な対応が求められました。
小野寺様:現場の作業時間は8時から17時です。現場ではパソコンを開くのは困難なため、毎日17時に現場作業が終わり、事務所に戻ってから帳票を作成していたのです。出張先ではホテルに戻ってから、もしくは移動車の中でパソコンを開き、作業することも多く、非常に非効率でした。
なかには写真添付が必要な帳票もあり、その管理は容易ではありませんでした。撮影自体はKANNA導入前からスマートフォンで行っていましたが、会社管理のスマートフォンとパソコンをケーブルで接続し、撮影日ごとにフォルダ分けし、必要な写真を抽出して帳票に添付する必要がありました。これだけでも手間と時間がかかる上に、写真整理にまで手が回らず、数日分をまとめて整理することもありました。その場合、日付ごとの判別にも時間がかかり、効率的とは言えませんでした。
福田様:そうした帳票の記入・提出に加え、翌日に向けた準備も欠かせません。私たちが対応する現場の多くは屋外であるため、掲示資料にはラミネート加工が必須です。この加工をしないと、風で飛ばされたり、雨に濡れたり資料が読みにくくなってしまいます。また、図面や資料の共有はメールで行っていたため、新規資料だけでなく内容を更新した場合にも都度メールを作成し、関係各所に送信していました。特に協力会社の方への緊急連絡には電話を使うことが多く、アナログな対応が中心でした。
小野寺様:以前の管理業務は非常にアナログ。そのため、現場には多くの紙資料を持ち込まねばならず、各種帳票や工程表の作成にも多くの時間がかかっていました。作業効率は個人の裁量やスキルに左右されやすく、業務の属人化も大きな課題。私たちは全社的にDXを推進していますが、なかでもプラント事業は最も早急にアナログ業務からの脱却をすべき部門であると認識していました。現場負担の軽減を目的としたDXの実行。これがKANNA導入のきっかけです。
パソコン不要、KANNAレポートなら日報の記入から提出まで現場で完結
—— DXによって現場負担を軽減するためにKANNAを導入。そのためのツールにKANNAを選ばれた理由はどこにあったのでしょうか?
福田様:まず、先ほどもお話ししたとおり、DXによる課題解決に向けてタスクフォースチームを結成し、リサーチを重ねました。インターネットでの情報収集や展示会にも足を運び、そこでKANNAの存在を知りました。自分たちの課題と照らし合わせながら、チャットボットで日報を作成できるアプリやタスク管理に特化したアプリなども検討し、そのなかで最も自社の課題解決に適していると感じたのがKANNAでした。
残業が常態化していた要因の一つは、日報に代表される帳票の記入・提出業務です。これを効率化するには、デジタル帳票アプリのKANNAレポートが最も有効だろうと考えました。もちろん、チャットボットによる日報作成も便利な面はあると思います。ただ、KANNAレポートは従来の運用を大きく変えずに導入できる点が非常に魅力的でした。以前から使用していた帳票のExcelフォーマットをそのまま活用できる上、手元のスマートフォンやタブレットで現場にいながら記入・提出が可能です。パソコンを開く必要もありませんし、入力した内容はクラウド上に保存され、KANNAレポートのアカウントを持っている関係者への共有も可能です。
小野寺様:導入の決め手となったのは、やはりKANNAレポートです。ただ、それに加えてKANNAプロジェクトも併用すれば、チャットによる業務連絡、資料や画像の管理・共有、カレンダー機能や工程表機能も活用できます。当社ですでに使用しているDXツールと重複する機能はありましたが、私たちが求める要素がすべてKANNAには揃っていました。帳票業務だけでなく、当社の施工管理全体をKANNAで包括的にカバーできると考えたことも選定の大きな理由です。
KANNAプロジェクトとKANNAレポートを併用し、年間約700時間の業務削減に
—— 実際にKANNAを導入活用され、どのような効果を感じていますか?
福田様:KANNAの導入は、まず一部の施行現場での運用に限定して、スモールスタートの形で運用を始めましたが、すでに手応えを感じています。帳票の記入・提出にかかる時間や手間が減り、現場業務の合間にタブレットで作成できるようになったのは大きな変化です。特に写真の添付作業は格段に効率化され、作業負担が軽くなりました。
小野寺様:撮影した写真を当該案件のフォルダにアップロードするだけで、撮影日ごとに自動でフォルダごとに整理されるようになりました。手作業でのフォルダ分けは不要になり、必要な画像もすぐに帳票へ添付できます。また、アクセス権を持つ関係者であれば、いつでもどこでもフォルダに保存された写真を確認できるようになり、煩雑な確認作業がなくなりました。
福田様:当社の工事では、重量物の吊り上げ作業が多く、その「吊り方」を写真として記録しておくことも重要です。もちろん作業指示書や図面にも記載はありますが、現場での対応は柔軟さも求められます。そうしたときに、実際の作業写真が最も確実な記録となります。以前はパソコンを開かないと確認できなかったものが、KANNAを導入した今、手元のスマートフォンやタブレットから確認できるようになりました。
小野寺様:写真管理だけでなく、帳票作成の作業効率も向上しました。KANNA導入前は、Excelフォーマットに合わせて写真をトリミング・軽量化し、貼り付ける必要がありました。しかし今は、カメラアイコンをタップし、必要な写真を選ぶだけで、自動的にサイズやデータ量が調整されて添付されるため、手間が大幅に省かれました。
福田様:KANNAプロジェクトとKANNAレポートを併用することで、日報の管理も非常にスムーズになっています。KANNAレポートは記入内容の保存と同時に共有も完了できますが、KANNAレポートのアカウントを持っていない関係者でも日報を確認できるよう、KANNAプロジェクトに“日報報告用”の案件を作成し、そこに記入が完了した日報を格納するようにしています。
特に好評なのが「ホバーアクション」の機能で、日報を開かずとも一覧表示のまま特記事項が確認できます。現場で最も大切なのは、事故なく作業を終えられたかどうか。例えば「本日無事故」などを記載しておけば、マウスを当てるだけでその内容が把握できます。この機能も業務効率化に大きく貢献しています。
アイコンにマウスを当てると、コメントがポップアップする「ホバーアクション」(赤枠)
小野寺様:KANNAの導入は、単に業務を効率化するだけでなく、業務プロセスを見直す良い機会にもなりました。例えば、日報のExcelフォーマットも以前は項目が非常に細かく、「本当にすべて必要か?」と感じていた部分もありました。KANNA導入を機に、それらの項目を精査し、より実用的なフォーマットへと刷新することができました。
福田様:ただし、KANNAを活用した私たちの業務効率化は始まったばかりです。これまでは一部の現場に限定した試験運用の形でしたが、新年度が始まった2025年4月以降、新規案件の帳票の取り扱いや、写真や資料の管理にはKANNAを活用するよう、次なる運用のステージに進み始めました。
実際、日報作成や写真のアップロードにかかる時間を試算した結果、年間で約700時間の業務削減が可能という試算が出ています。KANNAのさらなる活用によって、今後より大きな効果が期待できると考えています。
KANNA活用を前提とした業務プロセスを構築し、さらなる負担軽減を
—— 年間約700時間の削減。非常に大きな変化ですが、これからもKANNAを活用いただきながら、どのようにさらなる業務効率化を目指すのか、最後に今後の展望をお聞かせください。
小野寺様:KANNAの運用を一部の現場に限定し、スモールスタートの形を取った理由はKANNAの活用浸透を着実に進めるためでした。従来のやり方を一度に大きく変えると混乱が生じる可能性があるため、試験運用の段階で職員の声を拾いながら、より実態に合った運用方法を導き出すことが重要だと考えました。
また、現場に入っていただく協力会社の方には、ベテランの職人さんも多く、DXツールに対して抵抗感をお持ちになる方も少なくありません。そうした方もDXによる業務効率化を理解いただくには、まずは社内の職員がしっかりと導入の意義とメリットを説明できるようになることが大前提です。
試験的にKANNAを導入した現場では、職員へのアンケートでも非常に良好な結果が得られました。継続利用に否定的な意見はなく、タブレット端末でKANNAに格納した資料を閲覧できるようになったことで、現場に持ち込む紙資料が格段に減ったという声も上がっています。
福田様:現時点では、協力会社の方にKANNAを活用いただくかどうかは現場職員の判断に任せています。そのため、掲示資料のラミネート加工や緊急連絡時の電話など、アナログな作業が完全になくなったわけではありません。ただ、KANNAの導入により、業務効率化に向けた明確なロードマップを描くことができました。DXツールは万能な魔法の道具ではありませんが、KANNAレポートの導入をきっかけに日報のフォーマットを刷新したように、導入するツールに合わせて業務プロセスを改善していくことが、結果として効率化につながります。
また、DXツールは日々進化し続けており、KANNAにも新しく「承認フロー機能」が追加されました。こうしたスピーディーな機能改善にも非常に驚かされています。これだけ便利なのですから、この先、どの業界・企業においても、常に進化を続けるDXツールの運用を前提とした業務体制がスタンダードになっていくはずです。私たちもKANNAの機能をより活用できるような運用体制を構築し、真の目的である現場負担の軽減を目指していきます。
記事掲載日:2025年06月17日