電子帳票による効率化とマニュアル化が新商品を生む、食品製造会社のDX
1964年創業、湘南の地で原料も製法もこだわり抜いた餡を60年以上作り続けてきた湘南製餡。伝統的な餡づくりを継承する一方、近年は自慢の餡を活かした和菓子製造にも挑戦し、新たな事業の柱を確立しようとしています。しかし、新商品開発に欠かせない「製造日報」が、大きな障壁となりました。
食品製造現場特有の湿気により、手書きの紙日報はすぐに劣化し、さらに長年蓄積された大量の紙の中から必要なデータを探し出すのは至難の業でした。
そうした課題解決のため、湘南製餡ではKANNAレポートを導入。課題の詳細から解決策としてKANNAを選んだ理由、導入後の効果や今後への期待まで、代表取締役の望月真澄様にお話を伺いました。
KANNA導入の背景と効果
課題
・紙とペンでの手書き日報作成、製造現場の湿気による紙の劣化で紙がくしゃくしゃ
・日報のかさばりや、必要な情報の抽 出が困難
・過去データの活用が難しく、レシピの再現が属人化
導入の決め手
・直感的で圧倒的な使いやすさ
・帳票を手間なく電子化:帳票を漏れなく電子保存し、迅速な情報抽出が可能に
効果・改善
・製造管理のマニュアル化:帳票の電子化とフォーマット化で、効率的な情報管理を実現
・蓄積データの有効活用:データ活用により、新商品開発のスピードが加速
・管理の標準化が実現し、技術継承もスムーズに
お話を伺った方
湘南製餡株式会社
代表取締役 望月真澄様
創業60余年の製餡会社が挑む、事業の多角化と販路拡大
—— まずは御社の事業内容についてお聞かせください。
望月様:社名の通り、餡の製造販売を主な事業としています。和菓子屋、パン屋、お菓子メーカーに餡を卸すほか、製菓材料の卸売も手掛けています。当社の強みは、1964年の創業当時から変わらない、こだわりの製法です。厳選した良質な小豆を使い、手間暇かけた昔ながらの製法で、丹精込めて製造しています。主力商品である赤餡には食品添加物を一切使用しておらず、これもお客様に選んでいただける理由だと自負しています。

ただ、製餡業界全体は斜陽と言える現状です。業界組合の会員数も、以前は1,000人以上いましたが、今では250名ほどにまで減少しました。町の小さな製餡所は特に厳しく、廃業を考える経営者も少なくありません。
この状況を打開するため、私たちは事業の多角化と販路拡大に力を入れています。数年前からは製餡事業だけでなく、自社の餡を使った和菓子の製造にも注力し、お取引先も増加しています。和菓子の販路をBtoCにも広げるため、オンライン販売も開始しました。従業員も新しい挑戦に前向きで、ECサイトの立ち上げやSNSでの情報発信にも積極的に協力してくれています。

「求めていたのはこれだ!」。電子帳票なら写真添付も一発
—— どのような課題を背景に、KANNAレポートの導入を決められたのでしょうか?
望月様:当社の課題は、数年前から始めた和菓子製造にあります。主力の生餡、練り餡、羊羹に関しては、長年培ってきた経験と勘により、安定した高品質の商品を製造できます。しかし、和菓子は新規参入の分野です。新しく開発した商品に関しては、毎日のように試行錯誤を繰り返しています。温度や湿度によっても仕上がりが変わるため、品質を維持するには、日々の分量や加熱時間などを記録した製造日報が欠かせません。
KANNAレポート導入前は、紙とペンで製造日報を記入していましたが、アナログな手法ではデータを活用しにくいという課題がありました。和菓子の製造には蒸しの工程が多く、湿気で紙の帳票は劣化してしまい、乾くとごわごわになってかさばるため、判読や保管に非常に苦労していました。
日々の記録をファイルにまとめて保管していましたが、紙での運用では必要なデータを探し出すのも大変でした。例えば、原料の不作で製造を中止した商品のレシピを再開時に確認しようにも、どこに保管したのか分からず、書類を一枚ずつ探す非効率な状況だったのです。こうした非効率を解消する策を模索している中で、KANNAを知りました。
—— 帳票にまつわる非効率解消のツールとして、KANNAレポートを選ばれた理由をお聞かせください。
望月様:私たちの抱える課題を解決するには、紙とペンを用いたアナログな手法から脱却しなければならないと考えていました。そのため、電子帳票を作成できるKANNAレポートの機能そのものに強く惹かれたのです。
KANNAを知る前は、プログラミング知識なしで管理システムを自作できるサービスも検討しましたが、現実的にシステム製作にかける時間がありませんでした。その点、KANNAはすでに完成されたサービスでした。以前は手書きだった日報を電子化できるだけでなく、写真が添付できることも大きな決め手になりました。和菓子の品質は仕上がりの色合いにも左右されるため、写真で記録することでデータとしての有効性が格段に上がります。
—— 実際にKANNAレポートを導入されて、どのような効果がありましたか?
望月様:KANNAレポートを導入して以来、以前よりも詳細な製造日報を作成できるようになりました。これまでは決まったフォーマットがなく、必要最低限の情報をメモする程度でしたが、KANNA導入を機に、日報のフォーマットを一から作り直しました。今では材料や分量、加熱時間に加え、製造時の注意点や改善点、工程ごとの作業時間もタイムスタンプとして細かく記録しています。
Excelで作成した表をそのまま活用できるため、フォーマット作成に時間や労力はかかりませんでした。ツールの運営元であるアルダグラムのスタッフにも相談に乗っていただき、スムーズに現場で活用を開始できました。現在は調理場にiPadを置いて、和菓子製造を担当する従業員にKANNAレポートを使ってもらっていますが、数値やタイムスタンプの入力も皆がスムーズに使いこなしています。
また、製造時の注意点や改善点については、iPadのボイスメモを併用しています。事務所に戻ってから音声入力を聞き直し、落ち着いた環境で日報に入力できるからです。この方法はアルダグラムのスタッフからアドバイスをいただいたもので、「なるほど」と思いました。録音を聞き返して入力する時間自体が、作業の振り返りや見直しにつながっています。
少ない人手をカバーする、効率化とマニュアル化を実現
—— それでは最後に今後への期待と合わせ、御社と同じようにDXによる業務効率化を目指す他社にメッセージをお願いいたします。
望月様:KANNAレポートの活用により、日々の製造管理が格段に効率化すると確信しています。以前は過去の日報を探すのに一苦労で、時には必要な書類が見つからず、記憶を頼りにレシピを練り直すこともありました。しかし今では、日報が電子保存されるため検索が簡単です。手書き文字の読みにくさからも解放され、詳細な記録が可能になりました。
日々記録された情報を細かく分析できるようになったことで、商品の品質向上にもつながるはずです。KANNA導入後は、従業員一人ひとりが過去のデータを見返しやすくなり、今後のブラッシュアップに活かしやすくなるでしょう。
また、日報を電子化したことで、これまで難しかった製造管理のマニュアル化も進んでいます。技術継承には直接的な指導も大切ですが、効率化できる部分は効率化し、少ない人数でも品質の高い商品を豊富に提供できる仕組みづくりも重要だと考えています。
KANNAレポートはまさに、製造管理の効率化とマニュアル化を促進してくれるツールです。今後は既存商品の記録だけでなく、KANNAレポートを活用しながら新商品の開発アイデアも従業員と共有し、お客様に愛される商品を次々と生み出していきたいと考えています。これからも積極的にKANNAを活用していきます。
記事掲載日:2025年09月18日







