送電設備の点検帳票をクラウド管理、リアルタイム共有で対応スピード向上

沖縄電力株式会社
電気工事
沖縄県の電力会社として、県内の電力インフラの構築・維持を一手に担う、沖縄電力株式会社。日本に接近する約半数の台風が通過する台風常襲地帯でありながらも、県民の生活を支える電力の安定供給のため、日夜、業務に向き合う沖縄電力では、送電部門において、設備の巡視・点検業務や建設工事にKANNAおよびKANNAレポートを導入しました。
日常の業務だけでなく、台風が直撃した際には緊急の災害対応にも従事される沖縄電力は、何を課題にKANNAの導入を決め、どのような効果を実感されているのか。KANNAおよびKANNAレポートを導入した送電グループの嶺井政智様、外間裕己様、八幡裕人様、山城貴幸様、さらに沖縄電力と連携し、協力会社の取りまとめを担う、株式会社沖電工の赤嶺芳明様にもお話を伺いました。
KANNAを導入した目的
沖縄電力・沖電工・協力会社にまたがる報告書の作成・提出・確認にかかるタイムロスを削減したい
KANNAを導入する前の課題
(1)協力会社が報告書を作成・提出するには転記やデータ移行の手間がかかり、沖電工、沖縄電力のそれぞれの確認までに時間を要する
(2)関係各社が一元的にアクセスできる連絡ツールがなく、緊急性の高い情報共有にもタイムロスが生じる
KANNAを導入した効果
(1)複数社にまたがる報告書の作成・提出・確認をKANNAレポートに一本化。報告書の記入から写真添付、クラウドへのアップロードもモバイル端末で完結し、情報共有が迅速化。緊急性の高い事案への対応もスピーディーに
(2)業務連絡はチャットを活用し、進捗連絡は報告機能へ移行。セキュリティを担保しながらグループ外の協力会社も招待でき、どこからでも連絡可能になった結果、報連相の正確性とスピードが向上
(3)KANNAに「台風情報に特化した案件」を開設。現場写真や動画、交通状況などを集約し、他の案件と混同せず、迅速な情報共有が可能に

お話を伺った方
沖縄電力株式会社
送配電本部 電力流通部
送電グループ グループ長
嶺井政智様(右)
送電グループ
山城貴幸様(右から2番目)
送電グループ 主任
八幡裕人様(中央)
送電グループ 主任
外間裕己様(左から2番目)
株式会社沖電工
電力社会インフラ部
送電保修課 係長
赤嶺芳明様(左)
多くの離島を抱え、台風常襲地帯である沖縄県の電力インフラを担う
—— はじめに、沖縄電力株式会社の事業内容をお教えください。
山城様:私たちは沖縄県の電力会社として、県内への電力供給を主な事業としております。沖縄県は東西1000km、南北400kmにおよぶ広大な海域に点在する、大小様々な島で構成された島しょ県です。当社は沖縄本島を含む38の有人離島に電力を供給しています。
また、安定的な電力供給と同時に、沖縄県の美しい自然を守ることも私たちの務めです。当社では環境問題を経営の最重要課題に位置づけ、エネルギー供給総合事業にも取り組んでいます。
嶺井様:沖縄県は多くの離島を抱えるほか、台風の常襲地帯でもあります。そのため、電力を安定供給するにも再生可能エネルギーを推進するにも、他のエリアとはまた違った、さまざまな工夫が必要になりますが、当社の何よりの特徴は、本土から独立した小規模な単独系統で、自然災害時には送配電部門と発電・小売部門が一体となって対応できることにあります。
他エリアの場合ですと、送配電部門と発電・小売部門は別々の会社が担っています。しかし、台風に多く見舞われるという沖縄県特有の環境下においては38ある有人離島のすべてに電力を安定供給するには、送配電部門と発電・小売部門がより強固に連携し、災害時にも迅速に対応できるよう、常にバックアップ体制を整えておく必要があります。
外間様:当社の業務は多岐に渡りますが、今回、KANNAを導入しているのは送電部門です。送電設備の建設、維持管理や補修工事を担当する送電グループの業務効率化を目的に、KANNAを活用しています。
報告書に関わるタイムロスと転記ミス、二重の非効率を解消するために
—— 送電設備の維持管理、補修工事の業務にKANNAを導入。導入の背景には、どのような課題があったのでしょうか?
八幡様:電力を安定的に供給するには、送電設備の巡視・点検が欠かせません。この業務には複数の協力会社にお力添えをいただき、巡視・点検業務に従事される協力会社の取りまとめ役を担ってくれているのが、沖縄電力のグループ企業である株式会社沖電工です。
具体的には、協力会社の方々が各現場で巡視・点検を実施し、その結果を報告書にまとめ、沖電工の担当者に提出。そして、各現場の作業員から受け取った報告書を沖電工の担当者が精査し、送電設備の線路ごとに取りまとめた後に、私たち沖縄電力へと提出する流れです。
私たちは沖電工から提出された報告書をもとに各設備への対応を検討し、修繕が必要と判断した際には工事計画を立てるのですが、KANNA導入前の業務フローでは、現場作業に従事される協力会社にも、取りまとめを担う沖電工にも、私たち自身にも非効率が生じていました。
山城様:まず、協力会社に発生していた非効率としては、紙のメモから電子送信できる媒体への転記作業が挙げられます。巡視・点検業務は野外作業であることから、ノートパソコンを携帯していたとしても、現場で記入することは困難です。そのため、協力会社の方々がそれぞれに紙のメモを用意し、チェック項目を書き留め、報告書に必要な写真はデジカメで撮影していました。
しかし、それらを報告書として沖電工に提出する手段はメールのため、書き留めたメモをExcelないしWordに転記し、撮影した写真をSDカードからパソコンに移行する必要があります。転記とデータ移行の作業をするには現場から事務所に戻らねばならず、さらに転記の際にミスが生じる可能性もあります。従来はタイムロスと転記ミスという、二重の非効率が生じていました。
協力会社の作業にタイムロスが生じると、報告書を受け取る沖電工にも影響が出ます。報告書の提出までに待機時間が発生し、さらに協力会社から受け取った報告書に不明瞭な点があれば、沖電工の担当者から現場の作業員に確認を取り、正確な情報に書き換える必要がありますが、ここでも、タイムロスが生じていました。
八幡様:協力会社と沖電工の両方でタイムロスが重なると、当然、私たち沖縄電力が報告書を確認できるまでにも時間がかかります。こうしたロスを原因に、緊急性の高い事案への対応が遅れてしまう恐れがありました。
また、沖電工が取りまとめた報告書が私たちのもとに提出されるという業務フロー上、大量の報告書が一気に届くといった非効率も生じていました。一度に大量の書類をチェックするとなると確認漏れのリスクも高まるため、タイムロスの削減と同時に、確認漏れのない業務フローを確立したい。これがKANNAを導入した背景であり、導入の目的です。
KANNAレポートなら報告書の作成・提出・確認まで一気通貫、移動の非効率も解消
—— 報告書の作成・提出・確認にかかるタイムロスの削減と合わせ、確認漏れの防止を目的にKANNAを導入。では、そのためのツールにKANNAを選ばれた理由はどこにあったのでしょう?
嶺井様:操作のわかりやすさ、機能性の高さはもちろんですが、何より、他社へ付与するアカウントが無制限に無料という点が最大の決め手です。私たちはグループ企業の一員である沖電工と常に連携を取り、沖電工が取りまとめる協力会社も信頼の置ける企業ばかりです。
ただ、競争入札が生じる案件では沖電工とは別の企業と業務をご一緒することもあり、そうしたケースでは新規のアカウント付与が必要になります。しかし、他社アカウントが無制限無料なら安心。コスト増の負担なく、新たにご一緒する企業の方にもKANNAの活用をお願いできます。
山城様:具体的なところでは、スマートフォンやタブレットから報告書の作成ができるKANNAレポートの機能が決め手になりました。導入の背景にあった課題としてお話ししたとおり、これまで協力会社の皆さんには、紙のメモにチェック項目を書き留め、デジカメで写真を撮り、それらをデジタルの報告書としてまとめるために事務所に戻るという非効率が生じていました。
それがKANNAレポートを活用すれば、事務所に戻る必要がなくなります。作業完了後、手元のモバイル端末から手軽に入力でき、報告書に必要な写真撮影も添付も可能。しかも、これまで使用していたExcelのフォーマットをそのまま取り込めるため、作業員の皆さんも戸惑うことなく、直感的に入力できます。転記の必要もなくなりますから、手間と同時にミスも削減できます。
また、報告書の完成と同時にクラウドへのアップロードも完了。これなら沖電工の担当者も沖縄電力の担当者もアップロードと同時に書類を閲覧でき、タイムロスの原因となっていた待機の時間が解消。アップロードされた報告書を都度確認することにより、緊急性の高い事案にも即座に気づくことができます。つまり、KANNAレポートの機能が、私たちの抱える課題解決に合致したのです。
タイムロスや転記ミス、伝達の齟齬も一気に削減
—— では、実際にKANNAを導入され、どのような効果をお感じですか?
山城様:KANNAレポートの機能ですが、期待どおりの効果を実感できています。現場の皆さんにとっては、従来の紙のメモがモバイル端末に置き換わったような感覚かと思います。メモを取るような感覚でフォームに必要事項を入力していけば、それだけで報告書が完成します。写真添付が必要な箇所もカメラマークのイラストで可視化されるため、操作も非常に直感的です。
KANNAレポート内のカメラマーク(サンプル) ※沖縄電力の画面ではありません
そして、報告書が完成したなら、自動でアップロードまで完了。沖電工の担当者にも、私たち沖縄電力の担当者にもリアルタイムに共有され、新たな報告書がアップロードされるたびにプッシュ通知もされることから見落としの心配なく、現場の状況把握が迅速化。その結果、直近の点検結果もタイムリーに確認でき、次年度に向けた業務計画もより明確に立てられるようになりました。
協力会社の方の慣れを重視し、まずは以前から使用していたExcelのフォーマットをそのまま取り込みましたが、KANNAレポートは、ノーコードでテンプレートを自社オリジナルにカスタマイズすることが出来ます。今後は沖電工の方や協力会社の方の意見も伺いながら、よりスマートフォンで視認しやすく、入力しやすい形にカスタマイズしていく予定です。そうすれば、報告書の作成・確認がさらに効率化し、スピードアップします。
八幡様:また、KANNAレポート以外の機能も便利に活用しています。私たち送電グループの業務には送電設備の建設工事も伴い、工事の際には日ごとの進捗把握が不可欠です。KANNAを導入する以前は、協力会社の方に前日の作業実績と当日の作業予定を記した書類を作成いただき、それをPDFに変換。1日の工事が始まる前に、メール送信いただいていました。
書類をPDFに変換するにも添付送信するにもパソコンが必要になるため、パソコンを開き書類を作成する手間が生じていましたが、今では工事進捗の報告業務をKANNAへ移行。自分が担当する案件を選択し、報告書機能を立ち上げたなら、必要事項を入力するのみ。KANNAレポートと同様に、入力完了と同時にクラウドにアップロードされ、プッシュ通知もされます。
その結果、協力会社の方はパソコンを開き、PDFに変換する手間がなくなり、かなりの省力化になっています。これは報告を受ける立場の私たちも同じく、メールを受信し、添付ファイルを展開し、保存する手間が一気に解消。KANNAの当該案件を開けば、日ごとの工事進捗が時系列で表示されるため、見返す際にも重宝しています。
外間様:それにKANNAのチャット機能も業務効率化につながっています。私たち沖縄電力の従業員同士やグループ企業である沖電工の方と連絡を取り合うツールとして、当グループには社内ポータルのシステムが設けられていますが、セキュリティの都合上、インターネット環境があっても、社外に構えた事務所からはアクセスできず、結局は電話に頼らざるを得ない状況でした。
電話は緊急性の高い連絡を取り合うには非常に便利。現場の詳細な情報にしても、会話だから伝えられることもあります。ただ、電話では会話の内容が記録として残らず、聞き間違えが発生する場合もあります。しかし、KANNAのチャット機能なら、新たなメッセージが送信されるたびにプッシュ通知がくるため、電話と同じように即時性高く、さらに内容が関係者全員に記録として残ります。
そのため、今ではチャットを介した情報共有を基本に、特に緊急性の高い連絡事項の場合は電話をかけ、その後、チャットにも電話の内容を投稿するようにしています。チャットは電話の相手だけでなく、案件の関係者全員が閲覧でき、情報の全体共有もスムーズ。画像も送信できるため、情報共有の正確性が増し、コミュニケーションの齟齬が解消されたと感じています。
山城様:案件の関係者全員が同一の情報を閲覧できる。この便利さは資料共有の機能も同様です。沖縄県には約1200基の鉄塔があり、5年スパンの点検を実施しています。年間にして200以上の点検業務が発生するわけですが、数が多いだけに現場ごとに写真を整理するのも一苦労でした。
それが今では、KANNAが資料共有のプラットフォームとして機能しています。巡視・点検業務に関わる資料も、点検前後の鉄塔の写真も、KANNAに立ち上げた案件ごとのフォルダに集約していけば、沖電工の担当者が報告書を作成する際にも、必要な資料や画像を簡単に出力できます。
また、私たち沖縄電力としても、KANNAの導入前は「あの鉄塔の現状が知りたい」となると沖電工の方に連絡し、確認する必要がありましたが、現在は案件ごとのフォルダに格納された資料や写真を閲覧するだけ。先方の手を煩わせることなく、現場の進捗把握が可能になっています。
ベテラン職人でもハードルを感じることなく、“伝言ゲーム”を解消するチャット機能
—— 協力会社の取りまとめをされる沖電工のお話もお聞かせください。KANNAの活用開始以降、どのような変化をお感じになっていますか?
赤嶺様:現場作業に従事いただく協力会社の方のなかには、60代、70代のベテランもいらっしゃるため、KANNAの導入をお知らせした当初は従来のやり方を変えることに対し、抵抗感をお持ちになる方がいたことも事実です。ただ、特にチャット機能は、どなたもスムーズに使われています。日ごろから慣れ親しんだ、緑の無料チャットアプリのような感覚で操作できるのだと思います。
協力会社の皆さんが積極的にチャット機能を活用くださることにより、私たち沖電工の従業員も助かっています。私たちは沖縄電力と協力会社をつなぐ役割を担っているため、協力会社から緊急の連絡を受けた際に、私たちはその情報をすぐに、沖縄電力に伝える必要があります。
KANNAの導入前は、協力会社から沖電工、沖電工から沖縄電力という流れを取っていたわけですが、これではどうしてもタイムロスが生じてしまいます。しかし、KANNAのチャット機能なら投稿された内容を関係者全員が閲覧できるため、“伝言ゲーム”のような非効率さが解消されました。
緊急性の高い事案に対し、どのような対応を取るべきか。私たちが沖縄電力と協力会社の間に入り、綿密に連携を取る体制は今も変わりませんが、ひとまずの連絡をKANNAのチャット機能に移行することで、情報共有にかかる時間が短縮され、スピードが上がったと感じています。
スマートフォンアプリで見た場合の「KANNA」チャット機能(イメージ)
また、協力会社の方からは「写真のアップロードができるのも便利だね」というお声が上がっています。デジカメで写真を撮り、事務所に持ち帰り、パソコンに移行するという従来の方法は、協力会社の方も面倒だったのでしょう。それが今ではモバイル端末で写真を撮り、共有までモバイル端末で完結。私たちも現場で撮影された写真をリアルタイムに確認でき、利便性を感じています。
一方、KANNAレポートを用いた報告書の作成については、さらなる活用の浸透を進めている最中です。以前から使用していたExcelのフォーマットをそのまま取り込めるため、協力会社の方にも戸惑いはありませんが、画面の小さなモバイル端末では入力に難儀される方もおられます。そうした方のお声にもしっかりと耳を傾け、沖縄電力の皆さんに伝えることも私たちの役目です。
安定的な電力供給と現場の安全のため、災害対応にもKANNAを活用
—— ありがとうございます。それではKANNAのようなDXツールも活用されながら、沖縄電力はどう発展されていくのか。最後に、今後の展望をお聞かせください。
嶺井様:沖電工の赤嶺さんからお話しいただいた、協力会社の皆様へのKANNAレポートの活用浸透。これはもちろん、当社としても積極的に進めていきます。KANNAレポートを導入したからには、報告書のフォーマットは従来の紙をベースとしたA4規格に縛られる必要はありません。
入力のしやすさはもちろん、報告書の内容をデータとして活用していく際の扱いやすさも考慮し、柔軟性高く、フォーマットのカスタマイズを進めていくとともに、今後は画面の視認性をより高めるため、協力会社の方にもタブレット端末の支給ができないか、前向きに検討していきます。
こうした検討に乗り出せるのも、KANNAの導入効果を実感できているからです。今後、よりKANNAの活用が浸透すれば、協力会社も沖電工も私たち沖縄電力も、報告書の作成・提出・確認にかけていた時間がそれぞれに短縮され、現段階の試算では、1コース当たりに割いていたバックオフィスの作業時間が協力会社は95分、沖電工は140分、沖縄電力に関しては170分も削減できます。
また、KANNAは業務効率化に限らず、災害対応にも有効に働くと考えています。冒頭にもお話ししたとおり、沖縄県は台風常襲地帯です。作業員の皆様の安全を守り、なおかつ、迅速な対応をするには、事前の備えとスピーディーな情報共有が不可欠です。2024年にも大型台風の接近がありましたが、その際は事前の備えとして、KANNAに台風情報に特化した案件を立ち上げました。
幸いにも台風直撃には見舞われずに済みましたが、実際に直撃すると停電の恐れだけでなく、道路に木が倒れ、交通が遮断されることも予想されます。しかし、KANNAに台風に特化した案件を立ち上げ、そこに現場写真や動画、周辺の交通状況などを集約していけば、情報共有も災害対応も迅速化するほか、事後に必要な報告書を作成する際にも、スムーズに当時の状況を振り返れます。
そして、DXによる業務効率化は当社全体の課題でもあります。日常の業務も災害時の対応も、KANNAの活用を助けに好事例を示せれば、今後は巡視・点検業務や工事管理の業務だけでなく、他の業務にも活用の幅を広げられます。そうしたことも視野に、KANNAの積極的な活用を進めて参ります。
- 会社名
- 沖縄電力株式会社
- 事業内容
- 送電設備 巡視点検・建設工事
- 設立年月日
- 1972年5月15日
- 従業員数
- 1,536名
- ホームページ
- https://www.okiden.co.jp/
記事掲載日:2025年02月24日