【ビル設備安全管理】アプリでの写真共有が、管理者と現場の距離感を縮め、コミュニケーションの解像度向上を後押し
株式会社日立ビルシステム
各企業様はどのような課題を背景に「KANNA」の導入を考え、「KANNA」の導入により、課題はどのように解決されたのか。
今回は事業の主軸である昇降機などの開発から設計、製造、保守、リニューアルに至るまで一貫して手掛ける、ビル設備管理大手の株式会社日立ビルシステムの松本良史様、古田浩久様にお話を伺いました。
KANNAを導入した目的
現場における安全確保のレベル向上のため、「管理者」と「現場」でタイムリーに現場状況を把握したい
KANNAを導入する前の課題
- 定期的な安全パトロールのみでは、現場の状況を把握しきれずにいた
- 状況確認の一環として、現場との綿密なコミュニケーションを要していた
KANNAを導入した効果
- 施工管理の機能とコミュニケーションの機能を兼ね備えた「KANNA」により、タイムリーかつリアルな現場状況が把握可能になった
- SNSアプリに通じる「KANNA」のチャット機能により、現場とのコミュニケーションが円滑に。現場の声を吸い上げやすくなった
お話を伺った方
株式会社日立ビルシステム
◆安全研究センター 安全企画部 部長 松本良史様(左)
◆安全推進本部安全管制センターセンター長 古田浩久様(右)
※2023年9月取材当時
安全確保のレベル向上のため、タイムリーな状況把握を
—— はじめに、日立ビルシステムの事業内容をお教えください。
松本様:エレベーターやエスカレーターといった昇降機を中心に、空調設備、セキュリティシステムなどビル設備に関する事業を行っています。特にビルに必要な昇降機は機器の開発から設置、メンテナンスに至るまで、すべてを一貫して行う業態です。
古田様:「KANNA」を導入したのも、昇降機を中心とする部署です。私が担当する安全管制センターに、3カ月ほど前から導入しております。昇降機の新規設置も入れ替えも、全国各地に多くの工事現場があります。その業務を担ってくださるのは、各地の協力会社。業務に従事くださる皆様の安全を確認し、管理するのが安全管制センターの務めです。
—— 御社で安全管理ツールとして「KANNA」を導入された背景には、どのような課題があったのでしょう?
松本様:現場における安全確保のレベルを向上させる。これが「KANNA」を導入するに至った目的・背景です。協力会社さんがいなければ、現場業務は成り立ちませんので、協力会社の皆様に正しく、安全に作業いただくため、私たちは細かな指示をさせていただいております。その一方で、どうしても現場判断に依存する側面が生じていました。
古田様:現場業務にはイレギュラーが付き物ですよね。こちら側がどんなに進捗を管理して、現場の皆様がどんなに頑張ってくれたとしても、今日やるはずだった作業が翌日にずれ込んでしまう。これはどんな現場にも生じ、そこを調整くださるのは現場の皆様です。
松本様:しかし、現場の判断に頼りきりでは、安全をコントロールすることが難しくなります。これまでは、私たちが定期的に現場を訪れ、安全確保のためのパトロールを実施してきましたが、現場の状況をよりタイムリーに把握できれば、安全確保のレベルは確実に上がる。現場の方にとっても使いやすく、かつその都度リアルタイムで管理者と現場が情報共有できる仕組みづくり。その方法を模索した結果、「KANNA」にたどり着いた形です。
アプリの自社開発よりも「KANNA」導入で、圧倒的なスピードとコスト削減を実現
—— 「KANNA」導入の決め手は何だったのでしょうか?
松本様:そもそもの前提として、私たちは「施工管理のアプリ」が必要だったわけではないのです。より高いレベルで現場の安全を確保するためには、現場からのタイムリーな情報把握が重要であり、そのためには現場の皆様との情報キャッチボールが必要、つまり円滑なコミュニケーションが肝でした。
我々は当初、協力会社とのやり取りも、すでに弊社に導入していたコミュニケーションアプリを利用しようと考えました。ただ、これが難しい。協力会社の皆様にアカウントを付与するにも、ライセンスの問題が生じたのです。そこで、一時は専用アプリを自社開発することも考えました。しかし、安全確保のレベル向上は急務にも関わらず、自社開発ではどうしても時間がかかってしまう。課題解決のためには、時間はかけられませんでした。
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その結果、ゼロからの自社開発ではなく、既存のアプリ利用へと舵を切り、最初はビジネスに特化したSNSアプリの導入を検討しました。しかし、コミュニケーションの先にある目的は、「安全確保のレベル向上」。現場で撮影した写真を、我々管理者側に共有いただき、それを安全確保に役立て、エビデンスとして残す必要があります。すると、SNSアプリではその要望をかなえるには機能が足りませんでした。
現場の皆様から共有いただいた写真が単に残るだけでなく、きちんと階層を持ったデータとして保存でき、なおかつ、それぞれの現場ごとに、会話のキャッチボールのような感覚でチャット機能を使ってリアルタイムに管理者と現場でコミュニケーションが可能なツールはないものか。これらを検討した結果、「KANNA」がふさわしいのではないか、とたどり着き、導入に至りました。
—— プロジェクト管理の機能とチャット機能のバランス、ということですね。
松本様:はい。同時にカスタマイズの柔軟性、自社が持つデータと連携できる点も導入の決め手でした。さらに「KANNA」のいい点としては30日間の無料トライアルが設けられていること。弊社では、この無料トライアル期間中に操作性の確認と合わせ、システム担当部署にRPAなどを用いたデータ連係の検証・評価を依頼できたことは非常にありがたかったです。その結果、本格導入する前にさまざまな事前確認を万全に行い、最終的なゴーサインがおり、導入に至りました。自社でアプリ開発をするという考えから、「KANNA」を導入することへと舵を切り、本当に正解だったと感じています。
もし、自社開発の道を選んでいたら、まず、コスト面の桁がひとつ違っていたはずです。そして、何よりもスピード感ですね。一からアプリを開発するには、それなりの時間を要します。それが「KANNA」を導入することにより、自社開発も含めたアプリの検討から、わずか4カ月ほどで運用開始。圧倒的なスピード感に、非常に満足しています。
「デジタル」なコミュニケーションで効率化を図りながら、現場との大切な「アナログ」なコミュニケーションもなくさない
—— では、実際に「KANNA」を導入され、現場の皆さんの反応はいかがでしょうか?
古田様:現在の使い方としては、協力会社に「KANNA」を用いて日々の現場写真を撮影いただいては「KANNA」に共有いただいています。従来の業務に追加の作業をお願いするわけですから、抵抗を示される方がいたことに加え、スマホに不慣れなため、なかなか操作になじめない方がいたことも事実です。ただ、そこは地道に丁寧に、必要に応じて電話で会話しながら、説明を重ね、今では確実に「KANNA」を導入した効果が見え始めています。
具体的な効果として、まず我々としては、日常的に「KANNA」で情報を共有していただくことで、現場の状況がより立体的に見えてきました。従来の安全パトロールは、我々が現場に足を運ぶ形式であることから、対面である一方、どこか表面的であったことも否めませんでした。どういうことかというと、「発注元や管理者がパトロールに来る!」となると、現場で業務をされている方は、どうしても構えてしまいますよね。コミュニケーションもちょっと固くなる。ところが、「KANNA」を使い始めてから、変化が起こりました。
「KANNA」を通じて、現場の状況が共有されることによって、変に構えることのない、現場の皆様の何気ない“素”の部分が見えるのです。現場作業となれば、「今まさに作業をしている最中」ですから、綺麗に片づけて空間が整えられているというより、そのままの作業風景が写し出された画像が共有されてくるわけです。ちょっと散らかっていたり、作業道具が置いてあったり。それも含めて、現場のリアルな状況ですよね。むしろ、私たちが確認すべきは、そうした現場で起きているリアルな状況です。しかも、我々が「昇降機のこの部分を撮影してください」とお願いしたとしても、ときにお願いした部分とは別のところが写り込むことがあります。これもまた、大切な情報です。
現場の状況に気になる点があれば、チャットでその旨を連絡し、今度はそこに寄った写真を撮影いただく。すると、把握できる情報が格段に増えます。現場の皆様からすれば、面倒だと感じることもあるかもしれません。でも、撮影を重ねていただくごとに、写真のクオリティーが上がっていく方もいるのですよ。「お、この方は写真に目覚めたのかな?共有くださる写真のクオリティーがすごいぞ」なんて、ちょっと心が温まりますね(笑)。
—— 対面ではないからこそ、情報共有時のハードルが下がり、これまで以上により多くのことが見えてくる。しかも、やり取りをされている現場の方の人柄も垣間見えるとは、とても興味深いお話です。
古田様:もちろん、友人とのやり取りではなくビジネス上のやり取りですから、私としてもフランクな言葉は使えません。チャットでのやり取りも当然、お堅い敬語になります。そうした言葉のトーンが、文字だけで見ると冷たい印象に受け取られることもあります。実のところ、現場の方から「あなたには愛がない」という、ご指摘を頂戴したこともあります。そうしたときは電話で直接会話をして、きちんとご説明するようにしています。すべてをデジタルに移行するのではなく、コミュニケーションをするうえで必要なアナログは、引き続き重要視しています。
すると、先方もきちんご理解くださる。もしかすると、もっと淡々と進める手もあるのかもしれません。ただ、こうして地道に協力会社の皆様とやり取りをしていると、相手も心を開いてくださるのです。もちろん、安全確保という人の命を守る責任がありますから、時にはこちらから厳しい指摘をすることもあり、そんな時に協力会社から「いや、その指摘やルールはおかしい」とご指摘を受けることもあります。
しかし、これが非常に重要なのですよね。ご指摘を受けた際には法律やルールが設けられた当時の仕様書を振り返り、その根拠をお伝えするようにしています。それでも「いや、今の実状には即さない」というご意見を頂戴することもあり、それは現場の皆様からいただいた、安全確保のレベルを上げるための大切なアドバイス。むしろ私たちの糧になります。
パソコンのWEBブラウザだけでなく、スマートフォンのアプリも直感的に使うことができる「KANNA」
「KANNA」に蓄積された現場の声を糧に、さらに安全な現場へ
—— 「KANNA」を用いた綿密なコミュニケーションによって、お互いの関係性が築かれ、これまで以上に現場の声を吸い上げられる、ということですね。
古田様:そうですね。写真から見えてくる現場のリアルな状況も、現場の皆様が伝えてくださるリアルな声も、私たち自身が現場管理のクオリティーを上げていくためには不可欠です。もちろん、「KANNA」を導入した今も、我々が現場に出向く安全パトロールは欠かせません。しかし、事前に見えていることが多ければ、パトロールの効率も精度も確実に上がります。
この施策を着実に進めるために、最初の段階でいきなりすべての現場に「KANNA」の利用をお願いするのではなく、まずは一部の協力会社から徐々に導入を進めています。弊社では「KANNA」をスモールスタートの形を取りましたが、今後、全国各地の協力会社様に導入いただくことを計画しています。活用規模が大きくなると、その分私たちの元に集まる情報も増え、その蓄積が現場の生の声として、また今後に生かしていくことができます。
—— それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。
松本様:古田が申し上げましたとおり、大切なのはリアルな現場の状況であり、現場の方のリアルなお声です。「KANNA」を導入したことにより、その双方が解像度高く見えてきた実感があります。これらは私たちにとって、極めて重要な改善の機会でもあります。現場の状況がより深く把握できたからこそ、今まで以上に私たちから現場の皆様にきちんとフィードバックをして、お互いに納得しながら、より安全な現場を実現していきたいと考えています。
日立ビルシステム 古田様・松本様(中央2名)とKANNAスタッフ
私たちの業務では「KANNA」と連携させるべきシステムやデータも膨大です。そのため、さらなる機能の向上をお願いしたいこともあり、細かく要望をお伝えしてしまっているのですが、「KANNA」の営業の方は非常に丁寧。「そういえば」と備忘録のようにお伝えした要望にも、きちんと対応策をご提示くださいます。サービスのみならず、それを提供されるアルダグラムさんを含め信頼でき、いい出会いだったと感じています。だからこそ今後も「KANNA」の力を借りながら、現場の安全確保に努めてまいります。
- 会社名
- 株式会社日立ビルシステム
- 事業内容
- ビル設備、設備工事
- 設立年月日
- 1956年10月1日
- 従業員数
- 約8,700名(2023年3月時点)
- ホームページ
- https://www.hbs.co.jp/
記事掲載日:2023年11月07日